Appreciate Happiness ブータン・ブログ

    ブータン政府で首相フェローとして働いた日本人のブログ。Bhutan Blog by a Japanese worked as Bhutan Prime Minister's Fellow.

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    ブータンおすすめ本(2):本林靖久「ブータンと幸福論」高野秀行「未来国家ブータン」 Book recommendation for Japanese readers (2)

    (Sorry, this article is only in Japanese since I write about books on Bhutan written in Japanese.)
    (お知らせ)日本ギャップイヤー推進機構協会(JGAP)にエッセイを寄稿しました。
    「ブータンで幸せの意味を考える1年~リスクは自分への投資」と題し、これまでのキャリアの転機について書いています。ご笑覧ください。
    http://japangap.jp/essay/2012/05/post-25.html

    今回はブータンオススメ本を2冊紹介したいと思います。

    1.本林靖久「ブータンと幸福論」
    雑誌月刊望星5月号「ブータンvsニッポン シアワセ対決!」(http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/contents/1205.html
    で僕は「ブータンという人柄」というエッセイを寄稿させて頂きましたが、そのブータン特集で巻頭記事を担当されていたのが本林靖久さんです。
    「『小さな幸福』と『大きな幸福』のあいだ」というタイトルの記事では、文化人類学者であり浄土真宗の僧侶でもある本林さんの目から見たブータンの姿が語られています。

    日本人の読者に反響が大きかったらしいのが、お墓を建てないというブータン人の死生観。
    火葬の後、遺灰や骨のほとんどは川に流します。輪廻転生の中で死後四十九日で来世に生まれ変わると信じられているので、墓を建てて供養し続ける必要がないのです。

    肉親が亡くなるのは悲しいことですが、四十九日で次の生命に生まれ変わると信じれば、残された家族も悲しみを引きずらずにすむ気がします。
    先日、日本人の友人の肉親が亡くなってしまったのでこの話をしたところ、「気持ちが少し軽くなった」と言ってくれました。

    ちょうどこの望星が日本で発売されたときに、ブータンでバッタリ本林さんにお会いしました。首都ティンプーですら非常に小さい町なので、ブータンではこういう偶然がしょっちゅうあるんです。
    雑誌を通じてお互い名前を聞いていたので、思いがけない出会いに感激しました。
    僕は地元が大阪で、本林さんも大阪大学で非常勤講師を務めていらっしゃるので、「大阪でブータン関連のイベントができるといいね」と話が盛り上がりました。


    本林さんが以前出版された本が、「ブータンと幸福論」。
    僕自身はまだ拝読できていませんが、宗教の観点から、ブータン人の幸福感の背景が描かれているようです。


    本林さんのブータン観を知るにはこの記事もオススメです:
    http://www.nttcom.co.jp/comzine/no104/wise/index.html

    その本林さんが、明日5月13日日曜日のテレビでブータンの宗教観を日本仏教との関わりも含めてお話するそうなので、是非ご覧ください。


    番組内容:「ブータンの人々が幸福を感じているのは真剣に死と向き合っているから」と宗教人類学者で僧侶の本林靖久さんはいう。ブータンを見つめ続けて見えてきたものとは何か?

    [ 番 組 名 ]   こころの時代 ~宗教・人生~ 「幸せの形と向き合う」
    [チャンネル]   NHK Eテレ/Eテレ3
    [ 放送日時 ]  2012年5月13日(日)午前5:00~午前6:00(60分)
    [ 番組詳細 ]  http://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20120513-31-16733



    2.高野秀行「未来国家ブータン」
    最近はブータン本ブームですが、この本は特に面白い!!
    普段忙しくてなかなか本を読めないのですが、この本は寝る間も惜しんで一気に読んでしまいました。
    筆者高野さんのブータン訪問の目的は、何と「雪男を探すこと」。
    最近まで電気も通らない僻地が多かったブータンは土着信仰も盛んで、不思議なことも起こります。雪男を見たことがある人々がいても違和感がないのがブータンです。

    事前にゾンカ語を勉強して来られただけあって、ブータン人と深い交流をする様子が面白く、住んでいる僕でも知らないブータンの事柄がいくつも登場します。

    エピソードがいちいち面白いのですが、少し紹介すると、
    ・世間の狭さを利用するブータン人
    ブータンは本当に世間が狭いので、みんな知り合いという感じで、首都ティンプーを歩くと必ず知り合いに出くわします。
    高野さんが旅の相棒ツェンチョ君と買い物に行った際のエピソード:


    ツェンチョ君は店の人(両替商)に「やあ」と親しげに挨拶し、実際よりやや良いレートで換えてもらった。
    「ツェンチョ君は顔が広いから助かるね」と私が言うと、ツェンチョ君はくすっと笑った。「ほんとは僕はあの店の人、知らないんです」
    「え?」
    「ブータンは顔見知りが多いでしょ?でも顔や名前をいちいち覚えていないことが多い。だから僕はときどき知り合いのふりをするんです。すると、相手は『誰だか思い出せないけど、知り合いだろう』って思って、まけてくれるんです。」


    世間の狭さを逆手に利用するしたたかさが面白い(笑)。

    ・イクラを食べたがらないブータン人


    ブータン人の友人が日本に来たとき、妻は一緒に寿司屋に言った。彼は「うまい、うまい」と言って寿司をぱくぱく食っていたが、数の子やイクラといった魚卵と白魚だけは「食べられない」と顔をしかめたという。
    ブータン人にとって、大きくても小さくても命は命。だからマグロやタイといった大型の魚を何人かで分けると罪悪感が減るが、一人で何十もの卵や小魚を食うというのは大量虐殺みたいな気分になるらしい。
    さらに、これまた妻の話だが、ブータンの人達に「どの肉が好き?」と質問したところ、「牛肉」という答えが圧倒的だったという。理由は「大きいから」。妻は味の好みを訊いていたつもりが殺生の話にすりかわっていたのだ。


    この話をブータン人の同僚にしたところ、「牛も鶏も結局は殺してるんだから同じだ」という意見もありました。
    ただ、それぞれの動物が雑食か草食かは大事だそうです。草食の牛なら生き物を食べないのでOKだが、例えば魚は色んな生き物(プランクトンとか??)を食べるのでそれを食べるのは罪悪感が高まるのだとか?
    ブータン人によっても言うことは変わります。適当なところもブータン人らしさです。

    高野さんは、ブロクパという遊牧民が住むメラ・サクテンも訪れます。
    メラ・サクテンは、僕がブータンに来て1週間しか経たないときに出張で訪問した思い出深い場所。1日10時間近く歩かないと辿り着けない秘境です。
    P1060205.jpg
    一度訪れた場所なので、そこの文化や人々の様子を興味津々で読み進めました。
    メラ・サクテンで高野さんを世話したレキくんは僕らを去年世話してくれた若者と同一人物な気がします。
    P1060404.jpg
    (記憶が正しければ、左から2番目がレキくん。父親が祈禱師とは知らなかった)

    メラ・サクテンのブログ記事はこちら:
    メラへのトレッキングhttp://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-10.html
    メラからサクテン、そしてゴールへhttp://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-11.html

    当時は高山病が心配でお酒飲まなかったのですが、本来は地元の女性が訪問客に浴びるようにアラ(地酒)を飲ませるのがメラ・サクテン流の歓迎。
    高野さんのように飲みまくれば、僕のメラ・サクテン体験も全く違ったものになったでしょうね。

    ブータンの魅力ってつまるところは「人」だと思うので、ブータン人の生き方や考え方が伝わるこの本は貴重。
    笑いが随所に散りばめられつつ、ブータンが「世界でいちばん幸せな国」である真の理由も示唆深く考察されていて、オススメの1冊です。


    ブータンおすすめ本として以前紹介した「国をつくるという仕事」の著者、西水美恵子さんの新著「あなたの中のリーダーへ」が5月8日に発売になりました。
    先日一時帰国した際に先行販売で入手したので、読むのが楽しみです。


    「あなたの中のリーダーへ」Facebook公式ページはこちら。西水さんが、皆さんの感想を是非Facebookに書き込んでほしいと仰っていました。
    https://www.facebook.com/nishimizu

    先日、世界銀行東京事務所での講演「ブータンの貧困と金融問題」に来て下さった方、Ustreamでご覧頂いた方有難うございました。
    ちょっと早口だったみたいですみません。内容を欲張って詰め込みすぎたかもしれません。
    Ustreamで録画を見れますが、マイクの音が割れているので聴きづらいです。すみません。。。
    http://www.ustream.tv/channel/pic-coffee-hour

    Facebook「ブータン首相フェロー日記」はブログより頻繁に更新しているので、是非フォローして下さい。
    https://www.facebook.com/taktaktictac
    ツイッターでもブータンのことを呟いています。
    https://twitter.com/#!/taktaktictac 2012/05/12(土) 12:34:30 ブータンオススメ本・映画 Trackback::0 Comment::2

    ブータン・ドキュメンタリー映画「思いを運ぶ手紙」の上映イベント Bhutan documentary film "Price of Letter"

    (Sorry, this entry is only in Japanese since I'm introducing events in Japan)
    僕がティンプーで住んでいる家は街の中心から少し離れていてとても静かでいい所なのですが、すぐ側に暮らす大家さんの一家はユニークなキャリアを持つ人々です。
    大家さんはおばあちゃん(85歳くらい)で、3人子どもがいるのですが次女と長男(50代、二人とも名前はウゲン)の家族がそれぞれの家に暮らしていて、10代~20代の孫も住んでいます。
    次女のウゲンさんは以前国連機関で働いていて、旦那さんは以前は保健省の事務次官をしていて、今はWHO世界保健機関のデリーオフィスで働いています。
    その娘ペマ(つまり大家さんの孫)は最近ティンプーにおしゃれなバーをオープンしたりと、本当に活動的な家族。

    で、長男のウゲン・ワンディさんが、ドキュメンタリー映画監督なんです。
    彼はブータンに映画産業がほとんどなかった頃から映画を撮り続けている第1人者で、商業映画には興味を示さず、ドキュメンタリーに徹しています。
    ブータンに古くから伝わる伝統文化、宗教儀礼や自然環境が失われていくことを予期して、それをフィルムに収めることを自分の使命と感じている人です。

    彼のドキュメンタリー映画「思いを運ぶ手紙」がこの度日本のアース・ビジョン地球環境映像祭の賞を受賞したので、来週来日をされます。
    この映画、ブータンがいかに険しい山に囲まれていて、人々の生活が厳しいものかを知ることができると同時に、美しい大自然の中で素朴に暮らす人々の「幸せ」の原点を垣間見ることができます。
    映画が上映される機会が2回あるので、それをお知らせしますね。

    1.アース・ビジョン 第20回地球環境映像祭
    会場:東京都新宿区 四谷区民ホール (東京都新宿区内藤町87番地 四谷区民センター9階)

    映像祭は以下のテーマで3日間にわたって行われるのですが、ウゲンさんの映画は最終日の3月18日に登場します。
    3月16日(金)14:00 - 20:00 くらしを変える 未来が変わる
    3月17日(土)10:00 - 18:30 つながりを取り戻す – 3.11から1年
    3月18日(日)10:00 - 20:30 思いをつなぐ

    3月18日(日)15:55 【第20回子どもアース・ビジョン大賞】「思いを運ぶ手紙」
    (ブータン/2004/監督:Ugyen Wangdi/68分/ゾンカ語・日本語字幕)
    標高3500mを超えるヒマラヤの村リンシは、 首都ティンプーから険しい山道を歩いて5日の位置にある。 26年にわたって、リンシへの郵便配達を務める一人の郵便局員の日常とヒマラヤの大自然を描く。
    img_2012_018.jpg

    上映後にウゲンさんのゲストトークがあります。会場でDVDの販売もあるそうです。
    参加費や交通案内についてはこちらをご参照ください:
    http://www.earth-vision.jp/14-03mainfestival-j.htm

    2.日本ブータン友好協会、世界銀行情報センター(PIC東京)共催イベント
    上記の3月18日では参加できない人もいるかもしれないし、せっかくウゲンさんが日本を訪問するので、他にも上映イベントを開催したい!と思い、世界銀行の知り合いと日本ブータン友好協会にお願いしたところ、3月19日(月)にイベントが決定しました!

    ブータン・国民総幸福(GNH)の今 ~映画「思いを運ぶ手紙」から見えること~

    日時: 2012年3月19日(月)午後6時半から8時半まで
    場所: 世界銀行 東京開発ラーニングセンター(TDLC)
    http://bit.ly/uFtDNj
    内容: ブータンの映画「思いを運ぶ手紙」が描くのは、
    山道を片道5日歩いて山奥の村に手紙を届ける
    ブータンの郵便局員の姿。監督への質疑応答とあわせ、
    国民総幸福(GNH)のあり方を考えます。
    言語: 英語(日本語逐次通訳付き)
    詳細、参加お申し込み: http://bit.ly/AthapL

    ブータンの伝統や自然を撮り続けているウゲンさんに、直接ブータンのGNHの現状について質問できる貴重な機会なので、皆さん奮ってご参加ください!
    また、映像祭で売り切れなかったDVDがまだある可能性もあるので、興味のある方は当日ウゲンさんに直接お問い合わせください。

    日本ブータン友好協会、世界銀行情報センター(PIC東京)共催のシリーズ「ブータン・国民総幸福(GNH)の今」は今後も色々なスピーカーを呼ぶ予定、とのことなので、第2回以降の詳細が決まればお伝えしますね。

    ちなみにウゲンさんは「思いを運ぶ手紙(英題:Price of Letter)」の他にも「学びへと続く道(英題:Price of Knowledge)」という映画で国際的な映画賞を取っています。
    この映画の日本語への翻訳を今お手伝いしています。今回の来日に日本語訳つきのDVDは間に合わないと思いますが、この映画も1日何時間もかけて学校に通う少年を追っていて、心温まるものです。この英語版DVDも映像祭の会場で販売するのかどうかウゲンさんに聞いておきます!

    会場に行かれた方は、是非このブログもしくはFacebookで感想を聞かせて下さい!
    https://www.facebook.com/taktaktictac

    追記:
    皆様から素敵な感想を頂いたので一部を紹介すると、
    「あまりにも雄大な風景に息が止まりました。山の暮らしの中の幸せと、やはり苦労の部分と、どちらもフラットに見れた気がします。会場での質疑応答も、「開発と環境保護のギリギリのラインはどこ?」のようなものがあがり盛り上がりました。」

    「世銀の上映会に行きましたが、リンシに暮らす人々の生活がよくわかる映画でした。郵便配達員に焦点を当てた視点も面白いと思います。」

    「厳しい環境の中でも生涯仕事に誇りを持って働く主人公や、深い山々の美しさ、素晴らしかったです。」

    追記:
    世界銀行でのイベントの様子が世界銀行のウェブサイトにアップされています。
    http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/COUNTRIES/EASTASIAPACIFICEXT/JAPANINJAPANESEEXT/0,,contentMDK:23137992~menuPK:515521~pagePK:64027988~piPK:64027986~theSitePK:515498,00.html 2012/03/09(金) 18:29:14 ブータンオススメ本・映画 Trackback::0 Comment::0

    ブータンおすすめ本(1):西水美恵子「国をつくるという仕事」今枝由郎「ブータンに魅せられて」など Book recommendation for Japanese readers (1)

    (Sorry, this article is only in Japanese since I write about books on Bhutan written in Japanese.)
    (西水さんの本の印税が東日本大震災の救援に寄付されていることについて追記しました。)

    来月、僕の地元である関西から民間企業の方々がブータンに研修訪問されるので、事前にブータンのことを勉強するのにお勧めの本を聞かれました。

    せっかくなので、ブログで回答する形でいくつかの本をご紹介したいと思います。
    ちなみに「地球の歩き方」は、旅行ガイド以外にも文化面などの紹介も充実していてお勧めです。2012年3月10日に新版が出るみたいです!


    さて、今回は3冊オススメの本をご紹介します。年末年始を利用してブータン関連の本を読みたいと思っていた方も参考になさってください。

    1.平山修一「現代ブータンを知るための60章」
    まず、今回の訪問団が民間セクターの方々ということで、ブータンの経済、政治など多様な側面について広く知るのに最適なのがこの本です。
    章立てと主な内容を紹介すると、

    I 概要:ブータンの言語、民族、王政、GNHなど
    II 社会と生活:医療、教育、マスコミ、女性をとりまく環境、ファッション事情など
    III 経済:援助と国家財政、物価の変動、食糧自給率など
    IV 政治:環境政策、文化保護政策、政治体制など
    V 国際関係:消失した近隣王国、インドとの関係など
    VI 歴史と文化:民家のいま、マナーや礼儀作法、法要や葬送など
    VII 生活に根付く宗教:祭り、名前、結婚など
    VII 環境と資源:自然災害、森林保全など

    「ブータンの○○ってどうなってるんだろう?」とふとした疑問が湧いたときに、辞書代わりに使える、かゆいところに手が届く本になっています。
    2005年の本なので、参照されているデータは古く現状を反映していない部分もありますが、ブータンの国事情を広く、かつそれなりに踏み込んだ内容で抑えるという役割はまだ十分に果たすと思います。

    著者の平山修一さんは90年代前半に青年海外協力隊としてブータンで2年間働いたのち、2002年からも2年間シニア隊員として再赴任し、近代のブータンの発展をじかに体験されています。
    最近はGNH研究所を設立し、代表も務められています。
    http://www.gnh-study.com/

    アマゾンのページはこちら:


    2.今枝由郎「ブータンに魅せられて」
    まだ日本との国交もなかった1981年から10年間、ブータン国立図書館顧問としてブータンに赴任した著者が、その苦労や思い出話を回顧録としてまとめています。
    80年代は、先代の第4代国王の下で、ブータンが今に繋がる国のかたちを少しずつ整備しはじめた時期。70年代はじめに国王が提唱したGNHが当時どういった形で反映されていたのかを、一人の日本人の体験から探ることができます。

    また、著者の今枝由郎さんはチベット仏教の研究者なので、ブータン仏教と日本仏教を比較した視点も面白い。ひとえに仏教と言っても、ブータンと日本ではお寺や仏僧のあり方に大きな違いがあることが分かります。
    ちなみに今枝さんが本の中でその設立・建設をリードしたことが書かれている国立図書館は、僕の家のすぐ近くにあります。ブータンに来る前に本を読んでいたので、すぐ近くに発見したときは興奮しました。


    今枝さんは、1月10日に京大で行われるブータン仏教の国際シンポジウムにご参加されます。GNHの指標づくりをリードしている王立ブータン研究所のカルマ・ウラ所長もご参加されます。
    定員は既に埋まっていると聞きましたが、立ち見であれば受け付けているそうです。
    http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/event/2011/12/new33bbrp.html

    3.西水美恵子「国をつくるという仕事」
    この本はブータンだけを扱ったものではないのですが、僕がブータンで働くことに強い興味を持つきっかけを与えてくれた本です。
    著者の西水さんは、発展途上国の貧困削減を目指して援助を行う世界銀行の、日本人初の副総裁として尽力されました。
    南アジアを担当した経験から、ブータンの国王をはじめ、インド、パキスタンなどのリーダーたちと本気で向き合った生々しいエピソードが、厳しくも愛を持った目で描かれています。

    ブータンを取り上げている章を紹介させていただきます。

    「人づくりの奇跡」
    国づくりは人づくり、との信念から、途上国で学校視察をする際に西水さんが必ずしていた質問があります。
    『リンゴ一個たすバナナ一本は、いくつですか』
    自分で考えようとする姿勢と、勇気と、思考力は教育によって果たして培われているのか、それを試すこの質問。ブータンの子ども達は、西水さんの考える「正解」を元気いっぱいに答え、西水さんを驚かせます。
    「正解」が何なのかは、本を読まれる方の楽しみのために書かないでおきます。

    「雷龍の国に学ぶ」
    西水さんにとって、ブータンは「世界で一番学ぶことが大きかった国」。
    先代の第4代国王は、GNHの提唱、民主主義の導入などその強いリーダーシップが日本でも紹介されていますが、政治改革に着手したのは実は彼の父親、第3代国王だったというのはあまり知られていない事実です。
    世襲君主制の危険性を予知し、在位するなり「君主制と民主制を組み合わせた政府を作りたい」という断固たる意志を示した第3代国王。
    彼の言葉を引用すると、「我が国が強大な二つの隣国に挟まれている以上、将来、主権が脅かされるということもあり得る。したがって、平和と平穏を将来にわたり維持するために、安定した政府の形成を考えるときである」

    44歳と言う若さで志半ばに急逝した第3代国王の信念を受け継ぎ、第4代国王は民主化のための基盤づくりに尽力します。最も重要だったのは、カリスマ的な国王に頼ってしまいがちな国民の意識改革でした。そのために国王は、一人でも多く民の心を聴こうと、国中を歩き回りました。

    西水さんは、「国王が手がけた意識改革は、企業組織の『文化改革』と同質だ」と考えます。
    「まず指導者から民を信じなければ信頼関係は生まれないと、政治改革は地方分権化から着手した」第4代国王。その姿勢には、日本企業の経営者や管理職が学べるところもあるのではないでしょうか。

    「歩くタラヤナ」
    かつて「我が国に貧しい民はいない」と豪語していた大臣に、ドルジ・ワンモ・ワンチュク王妃は、「車窓から見るのは我が国ではない。自分の足で歩いて見なさい」と叱責したと言います。(第4代国王の4人の王妃たちは姉妹ですが、彼女達は6人姉妹の次女、三女、四女、五女だそうです。ドルジ・ワンモ・ワンチュク王妃は次女にあたり、王妃の中では年長者になります。)

    西水さんの本から引用すると、
    「子育てが一段落したころ、王妃は『今歩かなければ母国を知らぬまま一生を終えてしまう』と、僻地行啓の旅に出た。ブータンの山歩きは並大抵の苦労ではない。(中略)行啓を始めてすぐのこと。王妃は、貧困という名の罠にとらわれた国民の存在を知る。孤児。身寄りのない老人。身体障害者。義務教育は無料でも、制服を買う余裕のない親と、通学できない子の嘆き。外界から閉ざされがちな僻地に多い口蓋破裂症に苦しむ人々。このままでは国がいくら豊かになっても取り残されてしまう民を、王妃は『傷つきやすい民』と呼び『歩き続ける情熱の源』と言う。酸素の薄い大気にあえぎ、雨季にはヒルに血を吸われ、高山病にかかっても、止めなかった。自らに野宿を強いて歩き続けた。」

    この王妃も、そして先に挙げた第4代国王や今の第5代国王もそうですが、ブータンのリーダーの尊敬すべきところは、自ら歩いて国民の現状を把握するのに努めるところ。
    以前勤めていたマッキンゼーでは、企業経営においても「現場を知ることの大切さ」を教えられました。間接的に見聞きしているのと、実際に自らが現場を見て、問題を肌で感じるのとでは、導き出す戦略・解決策や、語る言葉の説得力に雲泥の差が生じます。

    ドルジ・ワンモ・ワンチュク王妃は、自らの貯金をはたいて、タラヤナ財団というNGOを設立しました。
    僕も仕事の関係でタラヤナ財団と話をすることが多いのですが、貧困にあえぐ農村に常駐のスタッフを置いて、草の根に根付いた支援で多くの尊敬を集めています。
    マイクロファイナンスを小規模ですが始めている唯一のNGOも、このタラヤナ財団です。
    首都の本部で働いている友人のブータン人女性もしょっちゅう地方に出張に行っています。「夏の出張でジャングルを歩いた際は体中をヒルに咬まれて困った」と笑う姿を見て、設立者の王妃の姿勢がスタッフに浸透していることを感じました。

    王妃の姿勢は、途上国開発や、ひいては国づくりにおいて、現場を見る大切さを教えてくれます。僕も首都ティンプーの中央銀行のオフィスに安住せず、機会を見つけては地方を訪れたいと思っています。

    「羅生門」
    この章では、GNHを語る際、国際社会において良く問題として取り上げられるネパール系ブータン人難民問題について語られています。
    この問題はブータンの中でも語る人によって見方が違い、非常に繊細な問題です。
    一部だけ引用するのは誤解を招く恐れがあるので、あえてしません。背景にあった歴史を知り、西水さんの意見を知るには、ぜひこの章を読んでみてください。

    「水際立つ・・・」
    この章では、国民の反対を押し切って息子に譲位をした第4代国王の「引き際」が語られています。
    国も企業も、どんな組織のリーダーにとっても難しいのは引き際。権力に固執するあまりに本来のビジョンを見失い、人心を失うリーダーの姿は、今年だけでも中東を中心に多く目にしました。
    潔く王位を譲った第4代国王の姿は、リーダーシップのあるべき形を普遍的に示してくれているように感じます。

    この本はブータン以外の国のエピソードも本当に面白いです。こちらの公式サイトで「はじめに」の全文が読めます。
    http://www.eijipress.co.jp/sp/kuni/

    (追記1)早速西水さんご本人からコメントを頂きました!有難うございます!
    (追記2)英治出版のツイッターで知ったのですが、この本の本年度の印税は全額、東日本大震災の救済支援に取り組む公益社団法人Civic Forceに寄付され、しかも印税と同額を英治出版が上乗せして同団体に寄付しているということです。素晴らしいですね。12月31日までが対象ということです。

    今回は計3冊ご紹介しましたが、忙しくて時間がない、という方にはこの1冊をお勧めします!


    「ブータン関連はこの本もお勧めですよ!」というご意見があれば、コメント欄でぜひ紹介して下さい! 2011/12/25(日) 22:22:58 ブータンオススメ本・映画 Trackback::0 Comment::6
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