Appreciate Happiness ブータン・ブログ

    ブータン政府で首相フェローとして働いた日本人のブログ。Bhutan Blog by a Japanese worked as Bhutan Prime Minister's Fellow.

    スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    --/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 トラックバック:(-) コメント:(-)

    GNHとは(1) ブータンGNHの運用と幸福度の現状 What is GNH? (1) GNH in operation and current situation

    幸福度を国づくりの目標としているブータン。GNH(国民総幸福)の概要と幸福度の現状、そしてリーダーの語るGNHについて3回にわたってレポートします。

    先日、関西生産性本部の主催で、関西の様々な企業の経営幹部候補の方々総勢25名がブータンに視察に訪れました。
    一番の目的はGNH(国民総幸福)について学び、日本の企業経営や国のあり方について考えること。
    ご縁があって準備段階から色々とお手伝いをさせて頂き、訪問された際にはGNHについてのプレゼンもさせて頂きました。
    A group of Japanese business executives from Kansai (region around Osaka, my hometown) visited Japan to learn GNH (Gross National Happiness). I held a presentation about GNH to them, so let me share it here.

    せっかくなのでその内容をブログでも紹介したいと思います。

    GNHは前国王である第4代国王が1972年に提唱し、概念としては数十年ブータンが追求してきたものですが、実際に政策ツールとして政府が実行するようになったのは民主主義に移行した2008年からと言えます。GNHの4本の柱をご存じない方は、下記のリンクのブログ記事で少し触れていますのでチェックしてください:
    The concept of GNH was introduced by His Majesty the 4th King in 1972. Bhutan has been pursuing GNH since then, but implementation of GNH as a structured policy tool started only since 2008 when democracy started.
    If you don't know about 4 pillars of GNH, please check my blog entry before. I touched about 4 pillars briefly:http://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-11.html

    では、実際にどういう形でGNH政策が運用されているのでしょうか。
    How is GNH policy implemented now?
    There are 3 main interventions: (1)GNHC (Gross National Happiness Commission), (2)GNH Policy Screening Tool, (3)GNH Index.

    運用には、大きく3つのツールがあります。
    (1)GNH委員会
    (2)GNH政策スクリーニングツール
    (3)GNHインデックス
    です。

    まず、(1)GNH委員会は、以前は「計画委員会」と呼ばれていた政府組織(日本で言う内閣府のようなもの)が、第5代国王によって「GNH委員会」と改組されたものです。
    その役割には以下のようなものがあります。
    (1)GNHC was a Planning Commission before. It was upgraded to GNHC by His Majesty the 5th King. Its role includes:
    -To develop 5-year plan and monitor its implementation
    -To Check if government policies and implementation plans are in line with GNH
    -To coordinate with Ministries, local governments, and donor agencies
    スライド4
    首相フェローの制度も、GNH委員会が運営していることは前々回の記事(http://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-28.html)で書きました。
    My program, "Bhutan Prime Minister's Fellowship," is also organized by GNHC (see the link above for more details).

    次に(2)GNH政策スクリーニングツールについて。
    これは、各省庁で策定された政策を、GNHのレンズから評価し、必要に応じて修正を促すものです。
    経済政策でも環境政策でもいいのですが、例えば以下のように、その政策が人々の「ストレス」にどういった影響を与えるかを4段階評価します。
    様々な項目について評価をし、平均点が悪い場合は、政策の変更を促します。
    The next is (2)GNH Policy Screening Tool.
    Policies developed by each Ministry need to pass the screening test to check if they bring positive impact on GNH. If not, the policy needs to be modified.
    Many aspects such as Stress level below will be assessed in scale of 4.
    スライド6
    Slide1.jpg

    以下は、WTOへの加盟が実際に見送られた際の評価項目の例です。
    全体として、WTO加盟はGNHにそぐわないと判断されました。
    スライド7
    このツールを使うことによって、GNHの側面から考慮すべき項目を政策担当者に意識させたり、GNHの多様な側面に資金・資源が最適に配分されるようにしたりする狙いがあります。
    Below is an example of WTO policy. Overall, entering WTO was regarded as not conducive to GNH.
    Slide2.jpg
    Using this screening tool will help policymakers pay attention to GNH aspects and also ensure allocating funding to various aspects of GNH.

    そして(3)GNHインデックスですが、これはGNHを指標化する試みです。
    特に欧米の政治家や研究者は、「国民総幸福はどうやって数値化するんですか?」と聞くことが多いです。
    幸福度を数値化することには弊害も伴いますが、海外からの要請に応えるため、というのもGNHインデックスが始まった背景にあると思います。
    (3) GNH Index is an initiative to measure GNH quantitatively. I think one of the main reasons of establishing the index is to answer the typical question from Western researchers and politicians, "How do you measure GNH or happiness?"
    スライド8
    Slide3.jpg
    GNHインデックスを指標化している国立ブータン研究所は、上記の9分野のうち6分野が満たされている状態を「幸せ」と定義していて、その定義によると幸せなブータン人は41%となっています(2010年時点)。
    しかし、この数字は「幸せ」をどう定義するかによって大きく変わってくる(例えば9分野のうち5分野が満たされているのを「幸せ」とすれば%はもっと上がる)ので、あまり大きな意味は持たないと思います。
    今後、この数字が向上していくのか、悪化していくのか、その変化の方が意味が大きいと言えるでしょう。
    Center for Bhutan Studies (CBS) defines happiness as the status "6 or more domains are satisfied." Under this definition, only 41% of Bhutanese are happy. In my opinion, this percentage does not have significant meaning because the definition of happiness here is arbitrary. If we define happiness as "5 or more domains are satisfied," obviously the percentage would increase. I think the trend of the percentage in the future will be more important than the absolute number itself.

    さて、この調査は2年ごとに実施されていて、一人当たり4時間半にわたってインタビューが行われ、9分野をさらに細かく分けた項目について質問が行われます。
    全体としての指標化以外に、この調査が政府の施策にどう反映されるかの例として、以下がよく取り上げられます。
    前回の調査で、ブータン仏教の伝統的な慣習である瞑想を実行している国民が少ないことが分かり、それを受けて学校教育に瞑想の時間が取り入れられました。
    ブータンにはヒンズー教徒もいるので、仏教のための瞑想、というわけではなく、瞑想自体に心を落ち着けて脳を活性化する効果があることを踏まえての政策です。
    This survey is conducted every 2 years.
    One example how the survey result was incorporated into policy-making is introduction of meditation in schools after the survey revealed that few population in Bhutan was practicing meditation.
    スライド25
    Slide23.jpg

    さて、2010年調査の回答者は7142人で、これは国民の100分の1以上にあたります。
    統計学上、全国民の声を反映するように行われたこの調査結果を見ると、ブータンの現状が浮かび上がってきます。
    中でも特に興味深く感じたものをご紹介します。
    2010 survey covered 7142 people, which are more than 1/100 of Bhutanese population. The survey result gives us interesting insights on the status of people's happiness. Let's go through some results I found interesting.

    まず、職業別の幸福度。
    安定度や福利厚生の充実のために、未だに人気が高い職業である公務員。
    それは幸福度にも表れています。逆に、昔ながらの農業は幸福度がかなり低いです。
    スライド10
    The happiest occupation is civil servants. No wonder why civil servants as a job is still popular for its stability and benefit package.
    On the other hand, farmers, who are the majority of workforce in Bhutan, are unhappy.
    Slide6.jpg

    次に、地方と都会の年収の格差。3倍以上の、歴然とした格差が存在しています。
    (年収の割に数字が非常に低いのは、一人あたりなので子どもの数が分母に含まれているためと思われます)
    スライド11
    The income gap between rural and urban is astonishing.
    Slide7.jpg

    その格差は、肥満度を表すBMIにも結果として表れています。
    肉など高カロリー食を食べ、それでいて車に頼るため運動しなくなった都会の人々には肥満の傾向がはっきり。
    スライド12
    The income gap between urban and rural is reflected in level of obesity. People in urban areas take more calories and exercise less because they have a car.
    Slide8.jpg

    田舎と都会の格差は、収入と労働時間の相関で見ても興味深い。
    定時で帰れるサラリーマンが多い首都ティンプーは労働時間が短い割に収入が飛びぬけて多いのに対し、野生動物などを夜も畑で見張らないといけない田舎の県は収入が低い割に労働時間が長くなっています。
    首都では土地が高騰しているため、土地を持つ者が家賃収入を得ていることも、首都の収入が多い理由でしょう。
    これを見ると、実家の農業を見捨てて首都に大量に流れ込む若者の姿は無理もない気がします。
    スライド13
    Below we can see negative correlation between working hours and income. People in Thimphu work shortest and earn most. It is opposite for farmers in rural areas. No wonder why young people leave their farms and migrate to Thimphu, dreaming easier life in Thimphu.
    Slide9.jpg

    次に識字率ですが、ブータンの識字率は全体では5割を切っています。
    スライド14
    Bhutan's literacy is lower than 50%.
    Slide10.jpg

    男女で大きな差があり、教育機会がかつて男子に偏っていたことが窺えます。
    スライド15
    Big gap between men and women.
    Slide11.jpg

    識字率でも、地方と都市部の格差はくっきり。
    スライド16
    Literacy also has a huge gap between rural and urban.
    Slide12.jpg

    ただ、ブータンが政策として力を注いでいる教育の効果ははっきり表れています。
    下を見ると、若年層では識字率が目に見えて向上していることが分かります。
    スライド17
    We can see a big impact of education among young population.
    Slide13.jpg

    職業別では、農家の識字率が圧倒的に低い。
    スライド18
    By occupation, literacy of farmers is much lower than other occupations.
    Slide14.jpg

    国民全体としては、小学校を出ていない人が6割以上いるのは驚きです。
    教育政策がまだまだ最近のことであることが分かります。
    スライド19
    Overall, more than 60% didn't even graduate from primary schools. We can see universal education is still a recent policy
    Slide15.jpg

    下記は、ストレスを感じている人の割合です。
    ストレスを感じているからと言って「幸せ」でないわけではありませんが、この割合は、日本で持たれているブータンのイメージとは違うかもしれません。
    スライド21
    There are populations feeling stress these days.
    Slide17.jpg

    下は職業別の怒る頻度ですが、失業者の怒る頻度が高いことが分かります。
    ティンプーの失業者は大きな問題になっていて、実際に若者同士の刺傷事件が多発しています。
    スライド22
    Unemployed youth are more angry than others. Indeed many incidents such as stabbing by youth are happening in Thimphu.
    Slide19.jpg

    さて、日本が「幸せ」でない根拠として良く上げられる自殺の多さですが、ブータンではどうでしょうか。
    自殺を過去1年に考えたことのある人は、地方では4%にのぼっています。
    この数字を多いと見るかどうかは人ぞれぞれですが、ブータンにも自殺は社会問題として存在しています。
    スライド20
    Japan is well known for its high number of suicides (more than 30,000 a year), but Bhutan also has the issue although in a small scale.
    Slide16.jpg

    国王の訪日の際の日本のメディアの報道で一番違和感を持ったのは、「ブータンでは97%の国民が幸せと感じている」という数字が独り歩きしていることでした。
    この数字は2005年の国勢調査のものですが、まず、近代化が急速に進んでいるブータンでは、2005年の数字は現状を全く反映していません。
    もちろん、今でも同じように「あなたは幸せですか?」という単純な聞き方をすれば、Yesと答える国民は多いかもしれませんが、一つの質問だけで「幸せ」の多様な側面を図ることは難しいものがあります。
    その意味で、国立ブータン研究所の調査結果は、国民の現状について色々なヒントを与えています。
    When Their Majesties (the King and the Queen) visited Japan last November, media always introduced the number "97% of Bhutanese are happy." from 2005 census. I found it outdated because Bhutan has been modernized significantly since 2005.
    I think the 2010 survey results reflect reality of Bhutan better.

    ここで紹介したのは調査結果の一部なので、興味のある方は、英語ですが下記のウェブサイトで詳しい結果を見ることができます。NATIONAL LEVELが国単位の結果で、その後に続くのが県別の結果です。
    If you are interested in more details of the survey result, please visit this website:
    http://www.grossnationalhappiness.com/survey-results/index/

    このプレゼンをしたとき、関西企業の訪問団の団長がおっしゃった感想は「GNHは破綻しているな」。
    When I held the presentation above to the group of Japanese businessmen, the leader of the group gave a comment, "It seems GNH is not functioning anymore in Bhutan."

    格差が広がり、失業が問題になり、国民がストレスを抱えているブータン。
    では、本当にGNHは「破綻している」のでしょうか。
    The gap is increasing, unemployment is increasing, and people are feeling stress...
    But is GNH really not functioning??

    このプレゼンを行った次の日に訪問団が会ったGNH委員会長官と、そしてティンレー首相が、その疑問に真摯な言葉で答えてくれました。
    訪問団の皆さんが、感動で涙を流すことになった首相の言葉。
    その言葉は、また次回に。
    On the next day of the presentation, the group had a meeting with the Secretary of GNHC and the Prime Minister of Bhutan.
    The two leaders answered the question about GNH in their own sincere words.
    At the end of the meeting with the Prime Minister, the Japanese delegates were touched and had tears. What were the words given by the Prime Minister to the Japanese people? Stay tuned... :)

    (コメントはFacebookでも歓迎です!)
    https://www.facebook.com/taktaktictac
    関連記事
    スポンサーサイト
    2012/01/29(日) 23:47:59 ブータンGNH (Bhutan GNH) Trackback::0 Comment::0
    <<GNHとは(2) GNH委員会長官が語る国民総幸福 What is GNH? (2) Words from the Secretary of GNHC | ホーム | Facebook始めました>>

    Comment:

    コメントの投稿

    管理者にだけ表示を許可する

    トラックバック:

    トラックバック URL
    http://thanks2happiness.blog.fc2.com/tb.php/30-25a2c88e
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。