Appreciate Happiness ブータン・ブログ

    ブータン政府で首相フェローとして働いた日本人のブログ。Bhutan Blog by a Japanese worked as Bhutan Prime Minister's Fellow.

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    GNHとは(1) ブータンGNHの運用と幸福度の現状 What is GNH? (1) GNH in operation and current situation

    幸福度を国づくりの目標としているブータン。GNH(国民総幸福)の概要と幸福度の現状、そしてリーダーの語るGNHについて3回にわたってレポートします。

    先日、関西生産性本部の主催で、関西の様々な企業の経営幹部候補の方々総勢25名がブータンに視察に訪れました。
    一番の目的はGNH(国民総幸福)について学び、日本の企業経営や国のあり方について考えること。
    ご縁があって準備段階から色々とお手伝いをさせて頂き、訪問された際にはGNHについてのプレゼンもさせて頂きました。
    A group of Japanese business executives from Kansai (region around Osaka, my hometown) visited Japan to learn GNH (Gross National Happiness). I held a presentation about GNH to them, so let me share it here.

    せっかくなのでその内容をブログでも紹介したいと思います。

    GNHは前国王である第4代国王が1972年に提唱し、概念としては数十年ブータンが追求してきたものですが、実際に政策ツールとして政府が実行するようになったのは民主主義に移行した2008年からと言えます。GNHの4本の柱をご存じない方は、下記のリンクのブログ記事で少し触れていますのでチェックしてください:
    The concept of GNH was introduced by His Majesty the 4th King in 1972. Bhutan has been pursuing GNH since then, but implementation of GNH as a structured policy tool started only since 2008 when democracy started.
    If you don't know about 4 pillars of GNH, please check my blog entry before. I touched about 4 pillars briefly:http://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-11.html

    では、実際にどういう形でGNH政策が運用されているのでしょうか。
    How is GNH policy implemented now?
    There are 3 main interventions: (1)GNHC (Gross National Happiness Commission), (2)GNH Policy Screening Tool, (3)GNH Index.

    運用には、大きく3つのツールがあります。
    (1)GNH委員会
    (2)GNH政策スクリーニングツール
    (3)GNHインデックス
    です。

    まず、(1)GNH委員会は、以前は「計画委員会」と呼ばれていた政府組織(日本で言う内閣府のようなもの)が、第5代国王によって「GNH委員会」と改組されたものです。
    その役割には以下のようなものがあります。
    (1)GNHC was a Planning Commission before. It was upgraded to GNHC by His Majesty the 5th King. Its role includes:
    -To develop 5-year plan and monitor its implementation
    -To Check if government policies and implementation plans are in line with GNH
    -To coordinate with Ministries, local governments, and donor agencies
    スライド4
    首相フェローの制度も、GNH委員会が運営していることは前々回の記事(http://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-28.html)で書きました。
    My program, "Bhutan Prime Minister's Fellowship," is also organized by GNHC (see the link above for more details).

    次に(2)GNH政策スクリーニングツールについて。
    これは、各省庁で策定された政策を、GNHのレンズから評価し、必要に応じて修正を促すものです。
    経済政策でも環境政策でもいいのですが、例えば以下のように、その政策が人々の「ストレス」にどういった影響を与えるかを4段階評価します。
    様々な項目について評価をし、平均点が悪い場合は、政策の変更を促します。
    The next is (2)GNH Policy Screening Tool.
    Policies developed by each Ministry need to pass the screening test to check if they bring positive impact on GNH. If not, the policy needs to be modified.
    Many aspects such as Stress level below will be assessed in scale of 4.
    スライド6
    Slide1.jpg

    以下は、WTOへの加盟が実際に見送られた際の評価項目の例です。
    全体として、WTO加盟はGNHにそぐわないと判断されました。
    スライド7
    このツールを使うことによって、GNHの側面から考慮すべき項目を政策担当者に意識させたり、GNHの多様な側面に資金・資源が最適に配分されるようにしたりする狙いがあります。
    Below is an example of WTO policy. Overall, entering WTO was regarded as not conducive to GNH.
    Slide2.jpg
    Using this screening tool will help policymakers pay attention to GNH aspects and also ensure allocating funding to various aspects of GNH.

    そして(3)GNHインデックスですが、これはGNHを指標化する試みです。
    特に欧米の政治家や研究者は、「国民総幸福はどうやって数値化するんですか?」と聞くことが多いです。
    幸福度を数値化することには弊害も伴いますが、海外からの要請に応えるため、というのもGNHインデックスが始まった背景にあると思います。
    (3) GNH Index is an initiative to measure GNH quantitatively. I think one of the main reasons of establishing the index is to answer the typical question from Western researchers and politicians, "How do you measure GNH or happiness?"
    スライド8
    Slide3.jpg
    GNHインデックスを指標化している国立ブータン研究所は、上記の9分野のうち6分野が満たされている状態を「幸せ」と定義していて、その定義によると幸せなブータン人は41%となっています(2010年時点)。
    しかし、この数字は「幸せ」をどう定義するかによって大きく変わってくる(例えば9分野のうち5分野が満たされているのを「幸せ」とすれば%はもっと上がる)ので、あまり大きな意味は持たないと思います。
    今後、この数字が向上していくのか、悪化していくのか、その変化の方が意味が大きいと言えるでしょう。
    Center for Bhutan Studies (CBS) defines happiness as the status "6 or more domains are satisfied." Under this definition, only 41% of Bhutanese are happy. In my opinion, this percentage does not have significant meaning because the definition of happiness here is arbitrary. If we define happiness as "5 or more domains are satisfied," obviously the percentage would increase. I think the trend of the percentage in the future will be more important than the absolute number itself.

    さて、この調査は2年ごとに実施されていて、一人当たり4時間半にわたってインタビューが行われ、9分野をさらに細かく分けた項目について質問が行われます。
    全体としての指標化以外に、この調査が政府の施策にどう反映されるかの例として、以下がよく取り上げられます。
    前回の調査で、ブータン仏教の伝統的な慣習である瞑想を実行している国民が少ないことが分かり、それを受けて学校教育に瞑想の時間が取り入れられました。
    ブータンにはヒンズー教徒もいるので、仏教のための瞑想、というわけではなく、瞑想自体に心を落ち着けて脳を活性化する効果があることを踏まえての政策です。
    This survey is conducted every 2 years.
    One example how the survey result was incorporated into policy-making is introduction of meditation in schools after the survey revealed that few population in Bhutan was practicing meditation.
    スライド25
    Slide23.jpg

    さて、2010年調査の回答者は7142人で、これは国民の100分の1以上にあたります。
    統計学上、全国民の声を反映するように行われたこの調査結果を見ると、ブータンの現状が浮かび上がってきます。
    中でも特に興味深く感じたものをご紹介します。
    2010 survey covered 7142 people, which are more than 1/100 of Bhutanese population. The survey result gives us interesting insights on the status of people's happiness. Let's go through some results I found interesting.

    まず、職業別の幸福度。
    安定度や福利厚生の充実のために、未だに人気が高い職業である公務員。
    それは幸福度にも表れています。逆に、昔ながらの農業は幸福度がかなり低いです。
    スライド10
    The happiest occupation is civil servants. No wonder why civil servants as a job is still popular for its stability and benefit package.
    On the other hand, farmers, who are the majority of workforce in Bhutan, are unhappy.
    Slide6.jpg

    次に、地方と都会の年収の格差。3倍以上の、歴然とした格差が存在しています。
    (年収の割に数字が非常に低いのは、一人あたりなので子どもの数が分母に含まれているためと思われます)
    スライド11
    The income gap between rural and urban is astonishing.
    Slide7.jpg

    その格差は、肥満度を表すBMIにも結果として表れています。
    肉など高カロリー食を食べ、それでいて車に頼るため運動しなくなった都会の人々には肥満の傾向がはっきり。
    スライド12
    The income gap between urban and rural is reflected in level of obesity. People in urban areas take more calories and exercise less because they have a car.
    Slide8.jpg

    田舎と都会の格差は、収入と労働時間の相関で見ても興味深い。
    定時で帰れるサラリーマンが多い首都ティンプーは労働時間が短い割に収入が飛びぬけて多いのに対し、野生動物などを夜も畑で見張らないといけない田舎の県は収入が低い割に労働時間が長くなっています。
    首都では土地が高騰しているため、土地を持つ者が家賃収入を得ていることも、首都の収入が多い理由でしょう。
    これを見ると、実家の農業を見捨てて首都に大量に流れ込む若者の姿は無理もない気がします。
    スライド13
    Below we can see negative correlation between working hours and income. People in Thimphu work shortest and earn most. It is opposite for farmers in rural areas. No wonder why young people leave their farms and migrate to Thimphu, dreaming easier life in Thimphu.
    Slide9.jpg

    次に識字率ですが、ブータンの識字率は全体では5割を切っています。
    スライド14
    Bhutan's literacy is lower than 50%.
    Slide10.jpg

    男女で大きな差があり、教育機会がかつて男子に偏っていたことが窺えます。
    スライド15
    Big gap between men and women.
    Slide11.jpg

    識字率でも、地方と都市部の格差はくっきり。
    スライド16
    Literacy also has a huge gap between rural and urban.
    Slide12.jpg

    ただ、ブータンが政策として力を注いでいる教育の効果ははっきり表れています。
    下を見ると、若年層では識字率が目に見えて向上していることが分かります。
    スライド17
    We can see a big impact of education among young population.
    Slide13.jpg

    職業別では、農家の識字率が圧倒的に低い。
    スライド18
    By occupation, literacy of farmers is much lower than other occupations.
    Slide14.jpg

    国民全体としては、小学校を出ていない人が6割以上いるのは驚きです。
    教育政策がまだまだ最近のことであることが分かります。
    スライド19
    Overall, more than 60% didn't even graduate from primary schools. We can see universal education is still a recent policy
    Slide15.jpg

    下記は、ストレスを感じている人の割合です。
    ストレスを感じているからと言って「幸せ」でないわけではありませんが、この割合は、日本で持たれているブータンのイメージとは違うかもしれません。
    スライド21
    There are populations feeling stress these days.
    Slide17.jpg

    下は職業別の怒る頻度ですが、失業者の怒る頻度が高いことが分かります。
    ティンプーの失業者は大きな問題になっていて、実際に若者同士の刺傷事件が多発しています。
    スライド22
    Unemployed youth are more angry than others. Indeed many incidents such as stabbing by youth are happening in Thimphu.
    Slide19.jpg

    さて、日本が「幸せ」でない根拠として良く上げられる自殺の多さですが、ブータンではどうでしょうか。
    自殺を過去1年に考えたことのある人は、地方では4%にのぼっています。
    この数字を多いと見るかどうかは人ぞれぞれですが、ブータンにも自殺は社会問題として存在しています。
    スライド20
    Japan is well known for its high number of suicides (more than 30,000 a year), but Bhutan also has the issue although in a small scale.
    Slide16.jpg

    国王の訪日の際の日本のメディアの報道で一番違和感を持ったのは、「ブータンでは97%の国民が幸せと感じている」という数字が独り歩きしていることでした。
    この数字は2005年の国勢調査のものですが、まず、近代化が急速に進んでいるブータンでは、2005年の数字は現状を全く反映していません。
    もちろん、今でも同じように「あなたは幸せですか?」という単純な聞き方をすれば、Yesと答える国民は多いかもしれませんが、一つの質問だけで「幸せ」の多様な側面を図ることは難しいものがあります。
    その意味で、国立ブータン研究所の調査結果は、国民の現状について色々なヒントを与えています。
    When Their Majesties (the King and the Queen) visited Japan last November, media always introduced the number "97% of Bhutanese are happy." from 2005 census. I found it outdated because Bhutan has been modernized significantly since 2005.
    I think the 2010 survey results reflect reality of Bhutan better.

    ここで紹介したのは調査結果の一部なので、興味のある方は、英語ですが下記のウェブサイトで詳しい結果を見ることができます。NATIONAL LEVELが国単位の結果で、その後に続くのが県別の結果です。
    If you are interested in more details of the survey result, please visit this website:
    http://www.grossnationalhappiness.com/survey-results/index/

    このプレゼンをしたとき、関西企業の訪問団の団長がおっしゃった感想は「GNHは破綻しているな」。
    When I held the presentation above to the group of Japanese businessmen, the leader of the group gave a comment, "It seems GNH is not functioning anymore in Bhutan."

    格差が広がり、失業が問題になり、国民がストレスを抱えているブータン。
    では、本当にGNHは「破綻している」のでしょうか。
    The gap is increasing, unemployment is increasing, and people are feeling stress...
    But is GNH really not functioning??

    このプレゼンを行った次の日に訪問団が会ったGNH委員会長官と、そしてティンレー首相が、その疑問に真摯な言葉で答えてくれました。
    訪問団の皆さんが、感動で涙を流すことになった首相の言葉。
    その言葉は、また次回に。
    On the next day of the presentation, the group had a meeting with the Secretary of GNHC and the Prime Minister of Bhutan.
    The two leaders answered the question about GNH in their own sincere words.
    At the end of the meeting with the Prime Minister, the Japanese delegates were touched and had tears. What were the words given by the Prime Minister to the Japanese people? Stay tuned... :)

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    2012/01/29(日) 23:47:59 ブータンGNH (Bhutan GNH) Trackback::0 Comment::0

    Facebook始めました

    (Sorry, this entry is only in Japanese)
    つい先ほど、尊敬する西水美恵子さんからメールをいただいてびっくり!

    西水さんのことは、その著書「国をつくるという仕事」の紹介で書かせていただきました。
    (そのブログ記事:http://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-26.html
    あの記事を読んで「国をつくるという仕事」を手に取って下さった方々から、感想をいただいたので少し紹介すると:

    「世界のリーダーの仕事の進めかた、志の高さに感銘しています。」

    「西水さんの気風のよい前書きに引き込まれ、一気に読み終えてしまいました。最終章には、おもわず・・・でありました。田坂さんの解説にも、胸が熱くなりました。」

    先日、関西から様々な企業の経営幹部の方たちがいらっしゃった際に、「ブータンを事前に勉強しておきたい」ということでこの本をご紹介したのですが、「世界の為政者達のリーダーシップから、企業経営にも学ぶことが大きい」という感想も頂きました。

    そんな世界のリーダー達に世界銀行副総裁として真っ向から向き合い、苦言も厭わずに本気で対峙してきた西水さん。
    そんな西水さんから今日頂いたメールは、先日僕がツイッターで紹介したブータンの首相とGNH委員会の長官の言葉を、西水さんのFacebookで光栄にもご紹介いただいたことの報告でした。

    そして、僕もFacebookを使ってこのブログを広めることをお勧めして頂きました。
    西水さん自身、最近Facebookを始めて、色んな方と直接やり取りをしてフィードバックを気軽に受けられる点が気に入っているそうです。
    西水さんのFacebookはこちらなので、ぜひ「いいね!」でフォローしてみて下さい:
    https://www.facebook.com/SimplyMieko.Official

    僕はFacebook自体は友人との交流に数年来利用しているのですが、そちらは基本的に会ったことのある友人のみとのやり取りなので、ブログ読者の方とはやり取りしていません。
    このブログはコメント欄が少し分かりにくいせいもあってか、これまで比較的コメントの数が少なかったこともあり、思い切ってFacebookページをブログ用に開くことにしました。
    「善は急げ」なので、尊敬する方からの助言はすぐに実行に移したいと思います!
    ぜひ「いいね!」でフォローして、ブログの感想など気軽に書き込んで下さいね。ブータンの写真なども随時色々とアップしたいと思っています。

    できたてほやほやのFacebookページはこちら:
    https://www.facebook.com/taktaktictac

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    (先日、法要(日本で言うお盆みたいに、年に2回ほどブータン人はお坊さん達を家に呼んで、家族が勢ぞろいします)に呼んでくれたブータン人の友人の息子の写真。子ども好き&犬好きなので。
    ブログに書きたいことはいっぱいあるんですが、仕事が忙しくてなかなかアップできません) 2012/01/27(金) 00:58:46 自己紹介・日記 (Profile, diary) Trackback::0 Comment::0

    ブータン首相フェローとは? What is Bhutan Prime Minister's Fellow?

    最近多方面から、ブータンの「首相フェロー」って何?と良く聞かれます。
    「首相補佐官」?ブータンの首相と毎日顔を合わせてるの?と疑問に思ってる方もいらっしゃるかもしれません。
    以前も少し書いたことはあるのですが、最近ブログをご覧になった方も多いと思うので、改めて説明できればと思います。
    I'm working in Bhutan as "Bhutan Prime Minister's Fellow." People often ask me "What is it?" "Do you meet the Prime Minister every day?"
    Let me explain about the fellowship.

    首相フェローのプログラムは、ブータンの発展に貢献する熱意のある若手の外国人を、ブータン政府の役人として一年間招聘するプログラムです。
    政府としてはフェローの持つ経験や専門知識を生かすことができると同時に、その個人にとってはブータンのユニークなGNH政策と開発へのアプローチを体験できる、win-winのプログラムになっています。
    このプログラムが始まった背景には、ブータンで専門性の高い人材が各方面で足りていないという政府のニーズにあります。政策遂行の多方面にわたって、外からの知見を必要としているのが現状です。

    This fellowship is provided by the government of Bhutan to young professionals from abroad who have a passion to contribute to the country's development. The fellowship provides an opportunity for a fellow to experience Bhutan's unique development approach pursuing GNH, and in turn Bhutan will benefit from the fellow's expertise. It is a win-win situation.

    この首相フェロープログラムは昨年始まったばかりの新しいもので、僕でまだ二人目です。初代は御手洗瑞子さんで、彼女は政府観光局に入って、観光の活性化に尽力しました。
    彼女の仕事やブータンについての分析は、日経ビジネスオンラインの連載に詳しいです。
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110610/220679/?rt=nocnt
    2月には本も出されるそうで、予約が始まっています。


    I am still the second fellow since the program just started in 2010. The first fellow was Tamako Mitarai also from Japan. She worked in TCB, Tourism Council of Bhutan, to promote tourism.
    Some ask me if I'm also working for tourism, but that's not the case.
    It depends on each fellow's expertise and interest which area and organization to work for.

    最近AERAの「日本を立て直す新世代100人」で御手洗さんが取り上げられていたこともあって、「高橋さんも観光の活性化をしているのですか?」と聞かれるのですが、僕がやっている仕事は全く違う分野になります。
    首相フェローがブータンのどういった分野やどの組織で1年働くかは、政府の優先分野と、フェロー自身の関心分野・専門領域によって変わってきます。

    僕は大学院で途上国の経済開発、特にマイクロファイナンスを勉強し、その前はマッキンゼーという経営コンサルティング会社で金融セクターを担当していたこともあって、現在はブータンの中央銀行(日本で言う日銀ですね)に入り、特に貧困層向けの金融サービスの拡大(Access to Finance)に取り組んでいます。
    詳しい内容については、このブログ記事で書いています。
    http://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-16.html
    Because I studied Microfinance at a graduate school in Georgetown University and worked for financial sector clients at McKinsey before, I'm working at RMA (Royal Monetary Authority of Bhutan, the central bank) to improve access to finance and promote Financial Inclusion. Refer the link above for more details about my work.

    実際にやっているのは、一つは金融包摂(Financial Inclusion)政策の立案や関連規制の見直し。
    二つ目は金融リテラシー向上プロジェクトとしてテレビドラマの案を立てたり、新聞に連載する記事を書いたり、学校で子ども向けに行う研修プログラムを考えたりもしています。
    その他、国際機関と話をして必要な資金を取り付けることにもトライしています。

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    (本業とは別に、日本からブータンを視察・観光に訪れる訪問団のお手伝いなども時折させて頂いています。写真は観光名所のタクツァン僧院
    In addition to my main task, I also support some official visitors from Japan as a guide/interpreter.)

    「首相フェロー」と言いつつも、普段は首相と接することはほとんどありません。これまでのところ、最初に赴任したときにご挨拶をしたのと、先日ある公式行事でお会いした際に少し近況を報告したくらいです。
    (追記:今週、日本からの訪問団と首相との会合に付き添ってすごく感動的なお話が聞けたので、またブログにアップします!)
    ただその分、GNH委員会の長官(ブータン政府の実質ナンバー2とも言える立場)とは自分が会いたければいつでも会って話をできるようになっています。
    I don't have daily interactions with the Prime Minister, but I can meet the Secretary of GNHC (Gross National Happiness Commission) anytime I need.

    この首相フェローのプログラム自体が、GNH委員会 (Gross National Happiness Commission)によって運営されているので、給料などはGNH委員会から支払われています。GNH委員会は、日本で言うと内閣府に近く、5か年計画の策定や実行に関する各省庁のコーディネートや、GNH(国民総幸福)戦略の立案を担当しています。

    The fellowship is supported by GNHC, which is the central government body for coordinating policy formulation and implementation and developing a strategy for GNH.

    「首相フェロー」と言うと結構いい給料をもらっているのだろう、という誤解もたまにあるようなのですが、日本の給与レベルと比較すると、給料は非常に低いです。ブータンの国家公務員の若手レベルの給料になるので、月給は2万円です。
    「でも日本政府とか、企業からサポートが出てるんでしょ?」という質問も良く聞くのですが、このプログラム自体には日本政府は全く関与しておらず、僕は前職も留学前(2年半前)に辞めているので、現在の収入はブータン政府からの2万円のみです。住居は提供してもらっていて、物価は低いので食べるのには困らないのですが、貯金はもちろんできません。

    Some think I'm well paid as the Prime Minister's Fellow, but the salary is very low from Japanese standards since it's based on the entry level as a Bhutanese civil servant. My salary is Nu12,500 (about 250USD) a month.
    I don't have any additional financial support from the Japanese government nor any companies, so 250USD is the only income right now. However, GNHC provides me housing, so the salary is sufficient for food and daily expenses.

    この点については、この仕事を取るかどうかを決める際に悩みました。アメリカの大学院が自費留学でかなり経済的に大変だった(この点については留学に関心のある方のためにまた別途書きたいと思います)ので、卒業後にこの給与水準で大丈夫か、と。

    The salary was the biggest concern for me when I was considering this opportunity. The tuition I paid for the Master degree in the US was very high, so I wondered if I should accept this level of compensation right after the graduation.

    でも、途上国政府の中に入って、首相や大臣レベルの人達と仕事をし、一国の発展に貢献できる機会というのは、途上国開発を学んだ身としてはまたとない機会です。
    また、ブータンはGNHという概念を知ったときから、ずっと憧れていた国でした。訪問も簡単ではないブータンで、1年間仕事ができる。このチャンスを逃すべきではないと思い、首相フェローとして働くことを決断しました。
    機会費用(他の仕事をこの一年していれば得られる収入)も考えると、短期的に経済的には最善の選択ではなくても、長い人生で見れば、このチャンスを取らない方がきっと後悔したんじゃないかなと思っています。

    However, as a person pursuing a career in development (economic development of developing countries), the opportunity to work for development with top leaders of a country was too precious to miss. I had been dreaming to work in Bhutan since I had gotten to know about GNH, so I decided to take this opportunity.
    It may have not been the optimal financial decision in a short term considering the opportunity cost (what I can earn by another job abroad), but I thought I would regret in the future if I didn't take this chance.

    実際にブータンに来て、自分が大学院で勉強したことを直接生かせる立場での仕事を楽しんでいます。ブータンでは何事も思うようには動かずストレスもありますが、「郷に入っては郷に従え」なので、ブータン人のゆったりしたペースを乱さないように、でも必要なことはきちんと推し進めていけるように、バランスを計る毎日です。
    I've been enjoying my work which is exactly what I studied in the Master degree. Sometimes I feel stressed by things not going as smoothly as I expect, but I try to follow Bhutanese pace while I'm in Bhutan.

    残り8か月を切ったので、仕事を加速させるとともに、少しずつブータン後のキャリアも考え始めなければいけません。その辺りの悩みもたまに書いて行ければな、と思います。
    Since it's less than 8 months left with my fellowship, I need to start thinking about the next career...

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    (ブータンにいる間にお二人とお話する機会があればなぁ、と夢想するのがミーハーな本音
    I wish if I could meet Their Majesties, the King and the Queen while I'm in Bhutan!)

    ちなみに首相フェローは、良い人材が現れた場合、政府としては毎年二人まで採用する用意があるそうです。つまり、現状でももう一人空席がある状態です。
    このプログラムは日本人に限っていないのですが、これまでたまたま日本人が続いています。
    首相フェローに求められる資質は、一定の英語力に加え、何よりも自分で動いて自分で課題を設定し、周囲をうまく巻き込んでプロジェクトを実行していく力だと思います(まだまだ僕も試行錯誤中です)。
    3年以上社会人として経験を積み、ブータンでその専門知識を生かしてみたいという熱意のある方は、是非ご検討下さい。
    By the way, the government of Bhutan is willing to take two fellows each year. Even now 1 more fellow can be hired in addition to myself.
    The nationality is not limited to Japanese. If you have a few years of working experience and expertise that fit to Bhutan's priority, please consider applying to the fellowship!
    I would say the most important capability required for the fellow is the proactive attitude to identify key issues, involve stakeholders to solve the issues, and manage and implement a project him/herself.
    If you have a strong passion to contribute to GNH, take the opportunity!

    詳しい募集要項はGNH委員会のページをご参照ください:
    Refer this link for TOR etc:
    http://www.gnhc.gov.bt/index.php/bhutan-prime-minister-fellowship/

    Facebook「ブータン首相フェロー日記」でも是非フォローしてください!
    https://www.facebook.com/taktaktictac
    ツイッターでもブータン情報を呟いています。
    https://twitter.com/#!/taktaktictac 2012/01/13(金) 21:29:01 首相フェローの仕事 (PM's Fellow) Trackback::0 Comment::0
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