Appreciate Happiness ブータン・ブログ

    ブータン政府で首相フェローとして働いた日本人のブログ。Bhutan Blog by a Japanese worked as Bhutan Prime Minister's Fellow.

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    GNHとは(3) ブータン首相が語るGNH(国民総幸福) What is GNH?(3) Words from the Prime Minister of Bhutan

    (Sorry, this article is in only Japanese)
    ようやく、下記に首相の話をアップできました。決してわざと引っ張ったわけではなく、ここのところ地方出張+ワシントンDCでの就職活動でスケジュールがきつかったのですみません!推敲してから記事にしたかったので。

    関西生産性本部の主催で関西の企業から経営幹部候補の皆さんが約25名ブータンを訪問された際、GNH委員会の長官に続いて、ティンレー首相との会合が実現しました(長官の話はこちら:http://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-32.html)。元々は、朝の国会前に15分ほどしかお会いできないということだったのですが、急なスケジュール変更によって会合が夕方に延期になり、そのおかげで1時間近くお時間を頂ける幸運となりました。首相はこの会合を非常に大切に思っていて、他の予定を切り上げて時間を作って下さったそうです。

    首相官邸

    以下、Raven Houseという迎賓館で行われた首相のお話です。

    「本日は、直前にスケジュールを変更して頂いて申し訳ありません。実は古都のプナカで12年に1度の大切な法要がありました。辰年の今年は、3つの点でブータンにとって重要です。1つは、ブータンが雷龍の国であること。2つ目は、ブータン仏教が龍に基づく伝統のあること。3つ目は、ブータンの人々が龍の人々(Dragon People)と言われていることです。今日は1週間続く法要が始まる日でした。直前まで連絡がなかったので、急に予定の変更をお願いすることになりました。申し訳ありません。

    政府を代表して皆さんをブータンに歓迎します。辻卓史名誉領事を通じて、皆さんは非常に重要な方々だと伺っています。

    日本とブータンは、非常に近いものがあります。心の底で、お互いに特別な感情を抱いています。経済発展のレベルは全く違いますが、同じ価値観を共有していると思います。
    日本から過去、観光客をはじめとして色んな方に訪問して頂いていますが、日本人の礼儀正しい振る舞いはブータン人の間に強い印象を残しています。ブータンの伝統文化や自然へ示して下さる敬意にも感謝しています。今、ブータンと日本の絆が強まり、熱狂的に関係が深まっているのを感じています。

    ブータンが日本に感謝している一番の理由は、開発援助です。この40年から45年、日本は多大な援助をしてきてくれました。国交が樹立されたのは25年前ですが、援助はその以前から行われています。日本は、農業をはじめとするブータンの大切な分野の発展に寄与してくれました。多くのブータン人にとって、日本は輝かしい見習うべき模範の国です。

    国王・王妃がご成婚のすぐ後に日本を訪問されたことを嬉しく思っています。ブータンの国民もメディアを通じて、国王の訪日を関心を持って見ていました。日本の皇室、政治家、国民の皆様からの歓迎をブータンでも心温かく見守り、日本人が国王を受け入れる姿を見て感動したのです。報道を通じて、日本の皆さんもブータン人が日本に対して抱いている親近感や思いやりの気持ちを持っていることが伝わってきました。

    国王・王妃が福島をご訪問され、鎮魂の祈りをして下さったこと、皆さんへの想いを示して下さったことも感謝しています。二人が福島を訪問したのは、単に鎮魂のためだけではなく、尊敬・称賛の意を示すためでもありました。マグニチュード9.0という巨大な地震とそれに続く津波・原発事故という前代未聞の困難な災害の中で、混乱することもなく、思いやりや助け合いの精神という根本的な人間としての価値観を勇気を持って示した日本人に、ブータンだけでなく世界中が感銘を受けたのです。

    今回の件で、日本人は本当に称賛を浴びました。経済発展で成功する過程で、伝統的な価値観を失っていなかったことを示したのです。自分を律し、責任感と勇気とともに困難な状況から立ち上がり、決意を持って家族に手を差しのべ、社会に連帯感を示す。そうした素晴らしい価値観が明らかになり、世界は感動したのです。

    私も、国王に先立って福島に行きましたが、人々の強い精神性に驚きました。この困難から立ち上がり、必ず復興するんだという強い決心を感じ、感銘を受けました。この災害で失ったもの、破壊されたものが極めて多いという状況の中で、共同体、国として新しく立ち上がることを信じている。その決意は、新しい日本の始まりを予感させました。人々は国を活性化し、強化する最善の道を探しています。未来に向けて、日本の形がより意義深く、より持続可能なものになるスタート地点にいるのです。

    私は過去6年に何度も日本を訪問し、その度に、GNH(国民総幸福)という従来とは違う開発のパラダイムについてお話をしました。経済一辺倒ではない新しい国のあり方について、日本ほど真剣に受け止めてくれる国は世界中のどこにもありません。

    日本は、従来的な経済発展に関しては世界のトップを実現しました。しかし今、これまでのやり方の限界や課題に直面していると思います。皆さんは、経済という意味で、究極的に成功し、ある意味でこれ以上進むところがないというところまで来ました。これまで、政治家、企業家、芸術家など色んな分野の日本人とお会いしましたが、今のままの日本ではダメだという認識は共通でした。

    現在、日本の皆さんは、経済成長、ひいては国のあり方について、色々な選択肢を模索されていると思います。私は、日本が色んな道の中から、きっと最適なものを見つけられると確信しています。皆さんは、知見も経験もある。新しい道を見つける勇気もある。きっと世界に示す成長の道を見つけてくれると信じています。その新しいモデルは、古代からの知見を活かしながら、最新のテクノロジーを意義深く使い、社会システムをより意義深くする仕組みになるでしょう。

    日本の皆さんが新しい道を探す過程で、ブータンが少しでも貢献できることに感謝しています。ブータンのGNHの哲学については、GNH委員会の長官から話を聞いて学んで頂いたと思います。GNHに関して、私から重ねて説明する必要はないと思いますが、質問があれば仰ってください。」

    P1000817.jpg

    訪問団
    「首相の講演録をはじめ、多くの本を読んでGNHについて学んで来ましたが、首相自身にとって、GNHとは何なのでしょうか。」

    首相
    「どんなブータン人にとっても、私にとっても、GNHというのは人生にとって何が一番大切かということです。何が一番大切かという質問を自分にぶつけたとき、『幸せ』ということが、自然な望みとして、説得力を持って浮かんでくるのではないでしょうか。人生の目的は幸せになることと、尊敬するダライ・ラマ法王も言っています。

    今日の物質社会で、国のリーダーが考えるのは、人々がもっとお金を持ったり、良い家に住んだり、車を持ったりすることを実現するということになりますが、そういった物質的・金銭的満足よりも、幸せになることが本来の目的であるはずです。

    では、幸せになるために何をしたら良いのでしょうか。私達は、お坊さんでも尼さんでもありません。そんな普通の私たちにとって、GNHは『バランスをとる』ということ。物質的豊かさと、精神的豊かさのバランス。体と心のニーズのバランス。私にとってGNHとは、バランスをとることだと思います。

    GNHで大切なのは、人間関係です。家族や共同体のレベル、例えば奥さんとでも、友人とでも、近所の人とでもいいのですが、一人一人が幸せで信頼に満ちた関係を作れるかどうか。言い換えれば、家族、社会の中で何かがあったときに、人々を助けられる自信があるかどうかということ。このことを、日本の皆さんは大震災で示してくれました。大切なのは本当の豊かさとは何かということ。それを再整理するのがGNHの役割と思っています。」

    P1000666.jpg

    訪問団長(団塊の世代の方です)
    「団を代表してお礼を申し上げます。昨年7月からこのメンバーで研鑽を積んでおり、欧州、アジアの各国を回ってきましたが、最後にブータンに来ることが出来て、本当に良かったです。感謝しています。

    この団のメンバーは企業の将来の経営幹部たちです。企業の経営環境は、日本では芳しくありません。多くのリスクがあり、世界経済が混沌とした中で、いかに各企業が生き残り勝ち抜いていくかを日夜苦しんで戦っています。

    首相の数々の言葉の一言一言に、私とメンバーは勇気づけられました。私達の日本の強さ、忘れていたことを思い出させてくれました。私たちは資本主義の中で頑張ってきたが、本来は人本主義がもっと大切であるということが思い出されてきました。日本も資源がなかったので、世界に出ていけたのはすべて人の力でした。

    今回、GNHに関心をもって勉強してきましたが、GNH委員会長官、そして首相の話を直接伺って、私はひとつの確信を持ちました。リーダーシップをとる人が、ビジョンと確信を持ってみんなを引っ張ろうとしている。そのことを強く感じました。

    日本が新しいモデルを必ず作ると言って頂きました。それは、ここに集まっているメンバーの世代が中心になってやって行くことになります。日本の成長・発展を支えてきた旧世代と、新しい若い世代の間の世代としてリーダーシップを取るのがここにいるメンバーの世代(30代後半~50代)です。

    今日GNH委員会の長官が、ブータンの一人一人がリーダーであるべきと言ってくれました。そういう感性が大切です。改めて、人の力の総和というのを原点に、企業のあり方、社会との関わりについて、我々が核となって、引っ張っていかなければいけないと思いました。

    ブータンにとってとても大切な龍の年に、首相とお会いすることができたことについて、2012年の龍にこれからもずっと感謝するでしょう。本当に有難うございました。」

    首相
    「残りの滞在を楽しんで、良い思い出を作ってください。私は皆さんが次の世代のリーダーとなって、新しい日本を導き、世界の光となることを確信しています。」
    首相官邸集合写真

    首相は最後に一人一人と丁寧に握手をして下さいました。
    僕は最後に順番が回ってきたのですが、握手だけではなく、「よくやった」と抱きしめて頂いたときは感無量でした。通訳はお互いの呼吸を読みながら行う必要があったので、言葉を選びながらの即時通訳は緊張しましたが、首相の気遣いもあってスムーズに行うことが出来ました。講話の途中、「GNHについてはMr.Takahashiも良く分かっているので、是非聞いてください」と仰って頂けたことも感激でした。素晴らしい話を間近で聴くことができて、首相フェロー冥利に尽きます。
    公式行事(ティンレイ首相15)

    文字では伝わりきれないかもしれませんが、首相の心からの真摯な言葉に、涙を流している訪問団の方も多くいらっしゃいました。「言葉の力」を強く感じた瞬間でした。

    「日本は必ず新しい日本を作り出す」との首相の言葉。大震災の後、僕自身もこれをきっかけに日本が変わるのでは、という期待を持ちました。しかし、国民の期待を裏切るように政治は混迷を続けています。
    そこで胸に刻みたいのが、GNH委員会の長官が言った、「国民一人一人がリーダーになる必要がある」との言葉です。政治や社会が変わるのを待つのではなく、一人一人がリーダーシップを発揮して変化を進めて行く。その先に、「新しい日本」がようやく生まれるのかもしれません。

    ちなみに明日、初代首相フェローの御手洗瑞子さんの本が発売になります。
    タイトルは「ブータン、これでいいのだ」
    彼女が見た首相や長官のリーダーシップもきっと載っていると思うので、是非読んでみて下さい!


    ちょうど同じ明日、田中敏恵さん「ブータン王室はなぜこんなに愛されるのか〜心の龍を育てる国のすべて〜」も発売になります。
    この5年で8回のブータン取材を敢行し、国王夫妻の来日時には京都にも同行しプライベートな茶会にも招かれたという田中さん。彼女がひもとくブータン王室、気になります。僕もちょっとだけ情報提供したのですが、どんな仕上がりかは知らないので、読まれた方は感想を教えて下さい。田中さんのブログはこちら:ブータン国王の本を書きました!


    地球の歩き方ブータンの新版も3月10日に発売されるみたいですね。是非皆さんブータンにお越しください!


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    2012/02/27(月) 14:52:30 ブータンGNH (Bhutan GNH) Trackback::0 Comment::2

    GNHとは(2) GNH委員会長官が語る国民総幸福 What is GNH? (2) Words from the Secretary of GNHC

    (Sorry, this article is in only Japanese)
    前回の記事で、関西の企業からの訪問団に向けて行ったGNH(国民総幸福)についてのプレゼンを紹介しました。
    貧富の格差が拡大するブータンの実態に、「GNHは破綻しているな」と感想を述べた団長。
    果たして、本当にGNHは破綻しているのでしょうか。そんな疑問を抱きながら、次の日にGNH委員会の長官と、そして首相とお会いしました。

    まずお会いしたのはGNH委員会の長官。
    10分ほど遅れて来たことを謝罪し、「遅れてしまった分、何分でも皆様の質問にお答えできればと思います」とスタートした長官。
    ブータン人は遅れても気にしない人がほとんどなのですが、長官は違います。そんなところに彼の誠実な人柄が表れます。

    図2 Dasho

    以下、彼の話を翻訳してみます。
    「(団長の挨拶を受けて)日本経済が停滞し、震災も重なって国としての方向性を見失っているためにブータンにそれを学びに来たと仰いましたが、ブータンに興味を持っていただけて嬉しいと同時に、圧倒される部分もあります。ブータンのような小国の経験で良ければ、共有させて頂きます。」

    「ブータンではどんな活動も、『幸福な生活』『幸福な未来』という共通の目標に向かうべきだと考えています。政府であれ、民間企業であれ、NGOであれ、農業であれ、それは変わりません。」

    「仏教では諸行無常を信じていますが、そんな中でも変えるべきではない価値観があると思っています。それは、他者への思いやり、愛、年上への敬意、子どもを大切にする気持ちなどです。これらは、世代を越えて伝えるべき価値観です。GNHは、それを社会全体で守って行こうとする取り組みです。」

    「皆さんは民間企業からお越しですが、これからの経営は、企業理念や社是が国もしくは社会の価値観と一致している必要があると思います。それが、長期的な競争力の強化に繋がっていくのではないでしょうか。」

    「GNHに民間企業が果たせる役割は大きいと思います。物質的な豊かさを提供することについて、ビジネスは十分すぎるほどの役割を果たしてきましたが、GNHが重視する精神的な豊かさについては、まだまだその貢献は大きくありません。逆にそれがビジネスチャンスを生み出していると言えます。Facebookがこれだけ世界的に流行したのは、『友人や家族との交流』という、人々が根本的に求めていることに価値を提供したからです。普段しょっちゅうは会えない大切な人との交流をより円滑にし、絆を深めたと言えます。そう言ったビジネスチャンスは、まだまだ存在しているはずです。」

    「(GNHの4つの柱や、9つの分野で重視している分野は?という質問に)
    ブータンが一番弱いのは経済です。人口が70万人と非常に少ないので、規模の経済が働きません。それを克服するようなテクノロジーや専門的な人材もありません。教育、保健、環境などGNHの他の分野ではブータンはうまくやっていると思いますが、経済は弱く、日本などから学ぶ必要があります。」

    「一方で近代化は新たな問題を生んでいます。特に都市部ではストレスが増え、コミュニティの繋がりは弱まっています。都市化に伴って治安も悪化しています。一つ希望があるとすれば、ブータンでは近代化は始まったばかりなので、まだ修正が効くということです。政府として問題は認識し、取り組みを行っています。それが成功するかどうかは、時間が明らかにするでしょう。」

    「(ブータンの国民がGNHという国是のもとに団結できているのはなぜか?日本では、国民を一つにするような価値観はない、という質問に)
    それには二つの理由があると思います。
    一つ目は、ブータンには第4代国王という素晴らしいリーダーシップがあったことです。第4代国王は、その価値観を自らの言葉、行動で体現する存在として、国民から厚い信頼がありました。そんなロールモデルから発せられたGNHは、強いインパクトがあったのです。
    二つ目には、GNHというコンセプト自体が持つ力があります。『幸せ』は人々が自然に求めていたことだったので、すんなりと共感を呼びました。国王が国民ひとりひとりに『幸せ』の大切さについて説得して回る必要はなかったのです。
    これら二つの要素がうまく合わさって、GNHは人々の心に根付いたんだと思います。」

    「(国王の訪日がなぜあれほど成功したと思うか?という質問に)
    私自身、国王訪問のすぐ後に日本を訪れたので、ブータンへの強い関心は肌身で感じました。
    国王訪日の成功には、いくつかの理由が挙げられると思います。
    まず、そもそも日本とブータンがお互いに抱く特別な親近感があります。ブータン人にとっては、ダショー西岡をはじめとして多くの日本人がこれまでブータンの発展に貢献してきてくれたことに感謝しています。日本人にとっても、ブータンの田園風景や、着物などの伝統文化、礼儀作法などが昔の日本を想起させるということを良く耳にします。顔もお互い良く似ていますよね。

    次に、第5代国王自身の人柄があります。
    彼はその言葉を心から発し、その言葉の通りに生きています。その真摯で謙遜に満ちた言葉は、どんな人の心にも響く力を持っています。
    彼は社交辞令ではなく、本気で敬意を示します。例えばブータンで地方を訪問する際にも、出会うおばあちゃんを前に、まるで自分の親に対するような労りの姿勢を見せます。そう言った真っ直ぐな姿勢が、日本でも受け入れられたのだと思います。

    また、震災の後にブータンが日本に感じた気持ちの強さも関係していると思います。
    震災後すぐに、ブータンでは自発的に義援金を集める行動が起きました。小学生の子どもですら、寄付を集めたのです。日本の皆さんが感じる痛みを、ブータン人も共有したのです。
    国王は鎮魂のために被災地を訪れましたが、日本人の復興に対する心の強さを真摯に信じています。
    悲劇の後でもお店に強盗などに走ることもなく、毅然とした対応を示した日本の皆さんに、私も個人的に感動しました。

    これらの理由で国王の訪問が日本の皆様に受け入れられたのだと思います。国王自身も、皆様からの温かい歓迎に幸せだったと聞いています。」

    ちなみに、王妃がユニクロでヒートテックを買ったのを見て、長官も東京のユニクロでヒートテックを買ったそうです(笑)

    GNH長官

    「(国としての人材育成に関して、各層のリーダーがどう育っているのか、また、今後どう育てていくのか。そして、国民自身の意識はどうなっているのか、という質問に対して)
    難しい質問ですね。人材育成に関して、簡単な答えはありません。
    普遍的な理論としては、教育に投資することだと思います。質のいい教育を、皆に提供する。
    ブータンの現在の教育制度は、将来の就職のためのスキルに少し寄りすぎている面があります。しかし、本来GNHの社会は、一人一人が生涯学び続ける姿勢を持つ社会であるべきです。
    そのために、『GNHのための教育』を導入しようとしています。

    先ほど述べたような、他者への思いやり、愛、年上への敬意などの価値観を伝えるために、これまではそれらの価値観を文字通り説明するだけの教育でした。
    しかしこれからは、以下のような教育を考えています。
    ①教師自身がロールモデルとなり、価値観を行動で示せるようになること。
    ②全ての教科でGNHの考え方をとり入れた教え方を実践する。例えば算数では、3人のうち、1人がりんごを2個持っていて、もう1人が1個、最後の1人が0個の場合、みんなで分け合うと各自1個になる、というような問題で、GNHの価値観を自然に植え付けます。
    ③瞑想を学校で導入し、1日に1~2回必ずやるようにしています。これは仏教や宗教のためではなく、心や脳の健康のためです。瞑想を実践することで、感情をすぐに行動に移すのではなく、冷静な思考のプロセスから知識を生むことができます。瞑想は体の健康にも人間関係にも良い効果が出ることが、科学的にも証明されています。

    これらの実践により、例えばエンジニアを育てるにしても『思いやりを持ったエンジニア』が育成できれば、消費者に優しいデザインが生まれると期待しています。

    人々自身の学びの姿勢については、生涯学び続ける姿勢が大切です。これは、継続した学びを通じて悟りに至ることができるという仏教の哲学に通じるものです。

    『優秀なリーダー』についての質問がありましたが、リーダーシップは特定のリーダーだけが持つものではなく、国民全てが持つべきものだと思っています。仕事で一生懸命頑張ること、周囲の人を助け、その能力を引き出すこと、そういうリーダーシップを1人1人が持つことを、国として目指しています。」

    「(日本からの観光客開拓についてどのような展開を考えているか、という質問に)
    High Value(高付加価値)、Low Volume/Low Impact(人数を絞り、環境などへの負荷が少ない)が観光政策の目指すところです。
    観光政策にはまだまだ課題がありますが、一つの取り組みとして、「接続を良くする」ことを考えています。例えば、羽田からバンコク経由での接続の利便性を向上させたり、シンガポールからの直行便を始める取り組みがあります。また、国内線も現在、中央部と東部に空港が出来ましたが、南部にも設置する予定です。
    ホテルについてはまだまだ充実させる必要があると考えています。

    季節変動をできるだけ失くし、1年を通じて来てもらい、また目的地もブータンの色んな地域を訪れてもらうことを目標としています。
    現在の5ヵ年計画が始まった2008年の観光客は25,000人でしたが、今年は目標65,000人、来年は100,000人と伸ばして行きたいと思っています。
    日本人観光客の姿勢は環境負荷が少なく、GNHの価値観と一致するので、是非とも訪問客を増やしたいと思っています。ブータンの観光のテーマとしては「ウェルネス」「大自然」「伝統文化」があります。ただ、まだまだ色々な施設が貧弱なので、投資家にも働きかけていきたいと思っています。」

    GNH長官集合写真


    長官とのミーティングは、予定の1時間を大きく超えて行われました。
    「経済」が弱いことを謙虚に認め、「都市化」が引き起こしている問題を認識しつつ、それでもGNHが守るべき根本的な価値観を追求することを諦めない長官の姿勢。
    国民一人一人がリーダーシップを発揮することを目指す教育。
    自分の言葉で明確に語られるビジョンに、日本からの訪問団の皆さんも関心していました。
    彼のようなリーダーを上司に持てて、僕は本当に幸せです。

    長官がブータン政府の実質的なナンバー2だとすると、政府のトップは首相です。
    長官とのミーティングのすぐ後に、私達は首相官邸に向かいました。
    日本人を鼓舞し、感動させた首相の言葉とは?それはまた次回に。

    (コメントはFacebookでも歓迎です!)
    https://www.facebook.com/taktaktictac 2012/02/05(日) 18:40:00 ブータンGNH (Bhutan GNH) Trackback::0 Comment::2

    GNHとは(1) ブータンGNHの運用と幸福度の現状 What is GNH? (1) GNH in operation and current situation

    幸福度を国づくりの目標としているブータン。GNH(国民総幸福)の概要と幸福度の現状、そしてリーダーの語るGNHについて3回にわたってレポートします。

    先日、関西生産性本部の主催で、関西の様々な企業の経営幹部候補の方々総勢25名がブータンに視察に訪れました。
    一番の目的はGNH(国民総幸福)について学び、日本の企業経営や国のあり方について考えること。
    ご縁があって準備段階から色々とお手伝いをさせて頂き、訪問された際にはGNHについてのプレゼンもさせて頂きました。
    A group of Japanese business executives from Kansai (region around Osaka, my hometown) visited Japan to learn GNH (Gross National Happiness). I held a presentation about GNH to them, so let me share it here.

    せっかくなのでその内容をブログでも紹介したいと思います。

    GNHは前国王である第4代国王が1972年に提唱し、概念としては数十年ブータンが追求してきたものですが、実際に政策ツールとして政府が実行するようになったのは民主主義に移行した2008年からと言えます。GNHの4本の柱をご存じない方は、下記のリンクのブログ記事で少し触れていますのでチェックしてください:
    The concept of GNH was introduced by His Majesty the 4th King in 1972. Bhutan has been pursuing GNH since then, but implementation of GNH as a structured policy tool started only since 2008 when democracy started.
    If you don't know about 4 pillars of GNH, please check my blog entry before. I touched about 4 pillars briefly:http://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-11.html

    では、実際にどういう形でGNH政策が運用されているのでしょうか。
    How is GNH policy implemented now?
    There are 3 main interventions: (1)GNHC (Gross National Happiness Commission), (2)GNH Policy Screening Tool, (3)GNH Index.

    運用には、大きく3つのツールがあります。
    (1)GNH委員会
    (2)GNH政策スクリーニングツール
    (3)GNHインデックス
    です。

    まず、(1)GNH委員会は、以前は「計画委員会」と呼ばれていた政府組織(日本で言う内閣府のようなもの)が、第5代国王によって「GNH委員会」と改組されたものです。
    その役割には以下のようなものがあります。
    (1)GNHC was a Planning Commission before. It was upgraded to GNHC by His Majesty the 5th King. Its role includes:
    -To develop 5-year plan and monitor its implementation
    -To Check if government policies and implementation plans are in line with GNH
    -To coordinate with Ministries, local governments, and donor agencies
    スライド4
    首相フェローの制度も、GNH委員会が運営していることは前々回の記事(http://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-28.html)で書きました。
    My program, "Bhutan Prime Minister's Fellowship," is also organized by GNHC (see the link above for more details).

    次に(2)GNH政策スクリーニングツールについて。
    これは、各省庁で策定された政策を、GNHのレンズから評価し、必要に応じて修正を促すものです。
    経済政策でも環境政策でもいいのですが、例えば以下のように、その政策が人々の「ストレス」にどういった影響を与えるかを4段階評価します。
    様々な項目について評価をし、平均点が悪い場合は、政策の変更を促します。
    The next is (2)GNH Policy Screening Tool.
    Policies developed by each Ministry need to pass the screening test to check if they bring positive impact on GNH. If not, the policy needs to be modified.
    Many aspects such as Stress level below will be assessed in scale of 4.
    スライド6
    Slide1.jpg

    以下は、WTOへの加盟が実際に見送られた際の評価項目の例です。
    全体として、WTO加盟はGNHにそぐわないと判断されました。
    スライド7
    このツールを使うことによって、GNHの側面から考慮すべき項目を政策担当者に意識させたり、GNHの多様な側面に資金・資源が最適に配分されるようにしたりする狙いがあります。
    Below is an example of WTO policy. Overall, entering WTO was regarded as not conducive to GNH.
    Slide2.jpg
    Using this screening tool will help policymakers pay attention to GNH aspects and also ensure allocating funding to various aspects of GNH.

    そして(3)GNHインデックスですが、これはGNHを指標化する試みです。
    特に欧米の政治家や研究者は、「国民総幸福はどうやって数値化するんですか?」と聞くことが多いです。
    幸福度を数値化することには弊害も伴いますが、海外からの要請に応えるため、というのもGNHインデックスが始まった背景にあると思います。
    (3) GNH Index is an initiative to measure GNH quantitatively. I think one of the main reasons of establishing the index is to answer the typical question from Western researchers and politicians, "How do you measure GNH or happiness?"
    スライド8
    Slide3.jpg
    GNHインデックスを指標化している国立ブータン研究所は、上記の9分野のうち6分野が満たされている状態を「幸せ」と定義していて、その定義によると幸せなブータン人は41%となっています(2010年時点)。
    しかし、この数字は「幸せ」をどう定義するかによって大きく変わってくる(例えば9分野のうち5分野が満たされているのを「幸せ」とすれば%はもっと上がる)ので、あまり大きな意味は持たないと思います。
    今後、この数字が向上していくのか、悪化していくのか、その変化の方が意味が大きいと言えるでしょう。
    Center for Bhutan Studies (CBS) defines happiness as the status "6 or more domains are satisfied." Under this definition, only 41% of Bhutanese are happy. In my opinion, this percentage does not have significant meaning because the definition of happiness here is arbitrary. If we define happiness as "5 or more domains are satisfied," obviously the percentage would increase. I think the trend of the percentage in the future will be more important than the absolute number itself.

    さて、この調査は2年ごとに実施されていて、一人当たり4時間半にわたってインタビューが行われ、9分野をさらに細かく分けた項目について質問が行われます。
    全体としての指標化以外に、この調査が政府の施策にどう反映されるかの例として、以下がよく取り上げられます。
    前回の調査で、ブータン仏教の伝統的な慣習である瞑想を実行している国民が少ないことが分かり、それを受けて学校教育に瞑想の時間が取り入れられました。
    ブータンにはヒンズー教徒もいるので、仏教のための瞑想、というわけではなく、瞑想自体に心を落ち着けて脳を活性化する効果があることを踏まえての政策です。
    This survey is conducted every 2 years.
    One example how the survey result was incorporated into policy-making is introduction of meditation in schools after the survey revealed that few population in Bhutan was practicing meditation.
    スライド25
    Slide23.jpg

    さて、2010年調査の回答者は7142人で、これは国民の100分の1以上にあたります。
    統計学上、全国民の声を反映するように行われたこの調査結果を見ると、ブータンの現状が浮かび上がってきます。
    中でも特に興味深く感じたものをご紹介します。
    2010 survey covered 7142 people, which are more than 1/100 of Bhutanese population. The survey result gives us interesting insights on the status of people's happiness. Let's go through some results I found interesting.

    まず、職業別の幸福度。
    安定度や福利厚生の充実のために、未だに人気が高い職業である公務員。
    それは幸福度にも表れています。逆に、昔ながらの農業は幸福度がかなり低いです。
    スライド10
    The happiest occupation is civil servants. No wonder why civil servants as a job is still popular for its stability and benefit package.
    On the other hand, farmers, who are the majority of workforce in Bhutan, are unhappy.
    Slide6.jpg

    次に、地方と都会の年収の格差。3倍以上の、歴然とした格差が存在しています。
    (年収の割に数字が非常に低いのは、一人あたりなので子どもの数が分母に含まれているためと思われます)
    スライド11
    The income gap between rural and urban is astonishing.
    Slide7.jpg

    その格差は、肥満度を表すBMIにも結果として表れています。
    肉など高カロリー食を食べ、それでいて車に頼るため運動しなくなった都会の人々には肥満の傾向がはっきり。
    スライド12
    The income gap between urban and rural is reflected in level of obesity. People in urban areas take more calories and exercise less because they have a car.
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    田舎と都会の格差は、収入と労働時間の相関で見ても興味深い。
    定時で帰れるサラリーマンが多い首都ティンプーは労働時間が短い割に収入が飛びぬけて多いのに対し、野生動物などを夜も畑で見張らないといけない田舎の県は収入が低い割に労働時間が長くなっています。
    首都では土地が高騰しているため、土地を持つ者が家賃収入を得ていることも、首都の収入が多い理由でしょう。
    これを見ると、実家の農業を見捨てて首都に大量に流れ込む若者の姿は無理もない気がします。
    スライド13
    Below we can see negative correlation between working hours and income. People in Thimphu work shortest and earn most. It is opposite for farmers in rural areas. No wonder why young people leave their farms and migrate to Thimphu, dreaming easier life in Thimphu.
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    次に識字率ですが、ブータンの識字率は全体では5割を切っています。
    スライド14
    Bhutan's literacy is lower than 50%.
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    男女で大きな差があり、教育機会がかつて男子に偏っていたことが窺えます。
    スライド15
    Big gap between men and women.
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    識字率でも、地方と都市部の格差はくっきり。
    スライド16
    Literacy also has a huge gap between rural and urban.
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    ただ、ブータンが政策として力を注いでいる教育の効果ははっきり表れています。
    下を見ると、若年層では識字率が目に見えて向上していることが分かります。
    スライド17
    We can see a big impact of education among young population.
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    職業別では、農家の識字率が圧倒的に低い。
    スライド18
    By occupation, literacy of farmers is much lower than other occupations.
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    国民全体としては、小学校を出ていない人が6割以上いるのは驚きです。
    教育政策がまだまだ最近のことであることが分かります。
    スライド19
    Overall, more than 60% didn't even graduate from primary schools. We can see universal education is still a recent policy
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    下記は、ストレスを感じている人の割合です。
    ストレスを感じているからと言って「幸せ」でないわけではありませんが、この割合は、日本で持たれているブータンのイメージとは違うかもしれません。
    スライド21
    There are populations feeling stress these days.
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    下は職業別の怒る頻度ですが、失業者の怒る頻度が高いことが分かります。
    ティンプーの失業者は大きな問題になっていて、実際に若者同士の刺傷事件が多発しています。
    スライド22
    Unemployed youth are more angry than others. Indeed many incidents such as stabbing by youth are happening in Thimphu.
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    さて、日本が「幸せ」でない根拠として良く上げられる自殺の多さですが、ブータンではどうでしょうか。
    自殺を過去1年に考えたことのある人は、地方では4%にのぼっています。
    この数字を多いと見るかどうかは人ぞれぞれですが、ブータンにも自殺は社会問題として存在しています。
    スライド20
    Japan is well known for its high number of suicides (more than 30,000 a year), but Bhutan also has the issue although in a small scale.
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    国王の訪日の際の日本のメディアの報道で一番違和感を持ったのは、「ブータンでは97%の国民が幸せと感じている」という数字が独り歩きしていることでした。
    この数字は2005年の国勢調査のものですが、まず、近代化が急速に進んでいるブータンでは、2005年の数字は現状を全く反映していません。
    もちろん、今でも同じように「あなたは幸せですか?」という単純な聞き方をすれば、Yesと答える国民は多いかもしれませんが、一つの質問だけで「幸せ」の多様な側面を図ることは難しいものがあります。
    その意味で、国立ブータン研究所の調査結果は、国民の現状について色々なヒントを与えています。
    When Their Majesties (the King and the Queen) visited Japan last November, media always introduced the number "97% of Bhutanese are happy." from 2005 census. I found it outdated because Bhutan has been modernized significantly since 2005.
    I think the 2010 survey results reflect reality of Bhutan better.

    ここで紹介したのは調査結果の一部なので、興味のある方は、英語ですが下記のウェブサイトで詳しい結果を見ることができます。NATIONAL LEVELが国単位の結果で、その後に続くのが県別の結果です。
    If you are interested in more details of the survey result, please visit this website:
    http://www.grossnationalhappiness.com/survey-results/index/

    このプレゼンをしたとき、関西企業の訪問団の団長がおっしゃった感想は「GNHは破綻しているな」。
    When I held the presentation above to the group of Japanese businessmen, the leader of the group gave a comment, "It seems GNH is not functioning anymore in Bhutan."

    格差が広がり、失業が問題になり、国民がストレスを抱えているブータン。
    では、本当にGNHは「破綻している」のでしょうか。
    The gap is increasing, unemployment is increasing, and people are feeling stress...
    But is GNH really not functioning??

    このプレゼンを行った次の日に訪問団が会ったGNH委員会長官と、そしてティンレー首相が、その疑問に真摯な言葉で答えてくれました。
    訪問団の皆さんが、感動で涙を流すことになった首相の言葉。
    その言葉は、また次回に。
    On the next day of the presentation, the group had a meeting with the Secretary of GNHC and the Prime Minister of Bhutan.
    The two leaders answered the question about GNH in their own sincere words.
    At the end of the meeting with the Prime Minister, the Japanese delegates were touched and had tears. What were the words given by the Prime Minister to the Japanese people? Stay tuned... :)

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    https://www.facebook.com/taktaktictac 2012/01/29(日) 23:47:59 ブータンGNH (Bhutan GNH) Trackback::0 Comment::0
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